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所得格差を考える第4版

■所得格差を考える(説明用)版第4版

        

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 前回の論考「バランスシート不況の経済学を考える」では、リチャード・クー(1954~)と木下栄蔵の両氏(1949~)が提唱する経済学をわたくしなりに解釈し解説した。

 その経済学理論は、1990年バブル崩壊によって生じた企業のバランスシートが毀損によって巨額な民間需要が失われ、これを補うために政府が財政出動を行って有効需要を創出し、それによって恐慌に突入することを防いだ〔功の側面〕というものだった。

 同時に、インフレ経済(好況)とデフレ経済(不況)ではたらく経済原理の違いを明らかにし、それぞれの場面でとるべき経済政策を明らかにした。

 暦年の財政出動は公債残高累増を招き、現在国家財政は破綻〔罪の側面〕している。

 同時期、前面の恐慌防止対策としての財政出動の他に、背面ではこれに便乗して1985年労働者派遣法制定、男女機会均等法施行、1989年消費税導入、所得税累進税率引き下げ、法人税率引き下げ、金融所得税税率引き下げ、分離課税創設など一連の税制改革が行われた。これらは将来に禍根を残す負の側面を持ってた。恐慌防止対策とは無関係で、必要ではなかったのではなかったか。

ものごとには原因と結果がある。

 「今日の所得格差はどうして生まれたのか」、その主原因は何だったか。本論考は、1990年前後に制定された労働者派遣法や一連の税制改革に原因ではないかという仮説を立た。そして主に次の税務統計・厚生労働省統計・総務省統計などの資料を使い、これら政策の功罪について一切の予断を許さないで検証することを試みた。

 単年度データ(断面)と長期時系列データ(傾向)
 税務統計から見た民間給与の実態
 税務統計から見た申告所得税の実態
 税務統計から見た法人企業の実態(法人税)

 これら国税は、労働力と資本の投入より毎年生み出す付加価値に課税するフロー直接税に関するものである。
 このほかに地方税としてストック直接税の相続税、贈与税やフロー事業税がある。相続税と贈与税は、過去につくられた付加価値に課税するものである。先代が残した遺産を相続した遺産相続者にかかる税である。これらは現在の所得格差を生んだ原因のひとつと考えられるが、本論考の範囲が広がりすぎるので、今回は触れる程度にとどめた。

 その他関連資料として、内閣府・国民経済計算、財務省・法人企業統計、総務省統計局・労働統計も合わせ使用することにした。

 以上の国の資料は、すべてインターネットで各省庁のトップページから統計関連資料を選びだし検索して入手したものである。統計情報そのものは数字の集積である。数字の羅列では全体象を把握することができなので、excelグラフに置き換えて視覚化し読み取ることとした。


ポール・クルーグマンの短見

 経済にとって大事なことは――つまりたくさんの人の生活水準を左右するものは――3つしかない。生産性所得分配失業、これだけ。これがちゃんとしていれば、ほかのことはどうにでもなる。これがダメなら、ほかの話も全滅。それなのに、ビジネスとか経済政策は、こういう大きなトレンドとはほとんど関係がない。

 みなさんの多くは、これじゃちょっと少なすぎるんじゃないかと思うだろう。インフレがどうした!国際競争力は!資本市場の状況とか、財政赤字とはどうなんだ!うんそれはだね。その種の話は次元がちがっていて、国の状態のよしあしに間接的にしか影響しないんだ。

 たとえばインフレは(少なくてもこれまでアメリカが経験してきたような10%にも満たない率だと)、直接的な害はほとんどない。インフレについて心配しなければならない唯一の理由は――そしてそれだってえらくあやふやな話なんだけれど――それが間接的に生産性の成長を引き下げるからだ。

 同じく財政赤字は、それ自体問題ではない。何が心配かというと、それが国も貯蓄を下げる結果になり、それが究極的には生産性成長の足を引っ張るんじゃないかということだ。
 ポール・クルーグマン クルーグマン教授の経済入門2009第2刷第1部経済のよしあしの根っこんとこ抜粋 
 
筑摩書房2008年ノーベル記念経済学賞受賞者(1953~)

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最終更新日
2020年2月19日