2016年4月「安保法施行」集団的自衛権容認、専守防衛が変質

 2016.3.29朝日新聞一面記事が踊る。
 2015年9月19日、参院にて安保法が成立。6ケ月余を経過して同法が施行されることとなった。
 憲法の上に法律をおく、という信じられない行為によって違憲法制を成立させた安倍政権。立憲主義の憲法による「法の支配」を自ら破ってしまった。なんで急ぐのか。国民大多数の反対と国会多数の賛成という国論のねじれにも拘わらず。「丁寧に説明する」というが、何時までたっても納得のゆく説明がない。

 文部省指導により教科書に安保法成立が記載されることとなった。憲法違反の安保法を憲法との関係でどのように説明するのだろうか。憲法の基本理念と立憲主義、民主主義の関係についてはどうか。今後、教育現場では先生と生徒の間で戸惑いが渦巻いてゆくことだろう。大人が未来を担う子ども達に難題を押し付けている。正常な事態ではない。まさに日本国憲法体制は緊急事態に陥っている。

 現在、その政権は更に改憲を目指すという言語道断の言明をしている。違憲立法をして汚したその手で、更に改憲などということは、その資格もないし、二重にあり得ない行為である。この異常な政治情勢の根源は、多数派に有利な小選挙区制度によってもたらされたものだ。今後の野党共闘の統一候補擁立によって、選挙の借りは選挙によって返すしかない。


 安保法は、昨年9月の通常国会で、自民、公明両党が採決を強行し、成立した。集団的自衛権行使を認める改正武力攻撃事態法など10法を束ねた一括法「平和安全法制整備法」と、自衛隊をいつでも海外に派遣できる恒久法「国際平和支援法」の2本からなる。

 戦後の歴代政権は、集団的自衛権行使を認めてこなかった。しかし安保法により、政府が日本の存立が脅かされる明白な危険がある「存立危機事態」と認定すれば、日本が直接武力攻撃されなくても、自衛隊の武力行使が可能になった。自衛隊が戦争中の他国軍を後方支援できる範囲も格段に広がった。

 安倍晋三首相は日本の安全保障環境の悪化を挙げて法成立を急いだ。しかし、国連平和維持活動(PKO)での「駆けつけ警護」や平時から米艦船などを守る「武器等防護」をはじめ、同法に基づく自衛隊への新たな任務の付与は、夏以降に先送りする。

 念頭にあるのは、今夏の参院選だ。世論の反対がなお強いなかで、安保法を具体的に適用すれば、注目を集めて参院選に影響する。そうした事態を避ける狙いがある。

 その一方で、安保法を踏まえた日米防衛協力のための指針(ガイドライン)に基づき「同盟調整メカニズム」が始動。自衛隊と米軍の連絡調整は一層緊密化した。今年1月以降の北朝鮮の核実験やミサイル発射を受け、首相は「日米は従来よりも増して緊密に連携して対応できた」と安保法の効果を強調した。ただ、日米の現場で交わされる情報の多くは軍事機密に当たり、特定秘密保護法で厳重に隠されている。

 中谷元・防衛相は28日、防衛省幹部に「隊員の安全確保のため、引き続き慎重を期して準備作業、教育訓練を進めてほしい」と訓示した。自衛隊は今後、部隊行動基準や武器使用規範を改定し、それに従った訓練を行う。

 民進党に合流する前の民主、維新両党は2月、安保法の対案として「領域警備法案」などを国会に提出。共産党など他の野党とは「集団的自衛権の行使容認は違憲」との点で一致し、安保法廃止法案も提出している。首相は野党連携に対し、「安全保障に無責任な勢力」と批判を強める。安保法をどう見るかは、今夏の参院選で大きな争点となる。朝日新聞2016.3.29(本田修一)

■安全保障関連法の主な法律
・集団的自衛権の行使を認める改正武力攻撃事態法
・地球規模で米軍などを後方支援できる重要影響事態法
・平時でも米艦防護を可能とする改正自衛隊法
・武器使用基準を緩め、「駆けつけ警護」や「治安維持任務」を可能とする改正PKO協力法
・他国軍の後方支援のために自衛隊をいつでも派遣可能にする国際平和支援法(新法)
 朝日新聞2015.9.19より転載