2012年12月 高尾の冬紅葉

11月29日8時半過ぎ、高尾駅からバスに乗り約25分で夕焼け小焼けの里に着き一人降りる。ほとんどの乗客は陣馬山を目指し、そのまま終点の陣馬高原下まで行くようだ。入口の沢に架かる吊り橋の敷き板には霜が降り真っ白になっている。明後日からは12月に入り、いよいよこれから冬本番だ。

今年の夏は猛暑が続き雨はあまり降らなかった。9月に入ってからも引き続き雨が少なく暑い日が続いた。その後はよく雨が降り、冷え込むことが多かった。寒暖の差が大きいと紅葉が鮮やかになるといわれている。そのせいか、今年は全国的に何処でも紅葉がよいようだ。紅葉を見るのに遠くまで出かけなくても身近なところに八王子・高尾周辺には紅葉の名所が沢山ある。今朝ここに来たのも、デジカメの仲間からここの紅葉が良かったと聞いてのことだった。

園内に入ると、すぐ左手に車庫に入った真っ赤な車体の昔懐かしいボンネット型のバスが目に入る。これは数年前まで実際に陣馬街道を走行していたとのこと。右手には瀟洒な厩舎付の小さなロバの運動場があり、3頭のロバが所在無げに柵の身を寄せている。まだ時間が早いので入場者がほとんど来ていないが、ここは休日ともなると家族連れがきて子供が喜ぶスポットの一つだ。

そこを過ぎると目の前に三角屋根の夕焼け小焼け館が見えてくる。ここには地元出身の世界的に有名な風景写真家前田真三の写真館が常設されている。中に入ってみるとまだ準備中のようで仕切りが設けられ見ることはできない。この建物から小道が続き、その脇に小池が配され、向こうに芝生の広場が見える。周辺には樹木が植えられ、紅葉が今や真っ盛りに色づいている。

今日は、この周辺で場所をいろいろ変えながら写真を撮ることにする。館の脇には紅葉と小さな竹林が配置され、小道に添ってサルビアが真っ赤に色づいている。小池には小流れが注ぎイモ洗いの水車が音を立てて回っている。小道はS字状のカーブになっており、角度を変えてみると様々は風趣が感じられる。これが人工と自然が調和した日本式庭園の素晴らしさだ。

西洋庭園の庭造りは、どうして直角の仕切りが多いのだろうか。なんだか人が自然を屈服させているように見える。西洋庭園づくりには人が自然を支配する思想そのまま表れているようだ。日本式庭園は人工ではありながら自然に学んで自然の風趣を取り込み、人の手がかかった風を極力消し去っている。西欧の精神文化の根底に砂漠から生まれた1神教のキリスト教がある。一方、日本では自然を尊び、自然を神とする多神教が民衆に定着している。なんでも採り入れる宗教的な摂生がない民族といわれているが、科学文明が自然を破壊しつつある今日、自然を愛す日本文明こそが今後の行き方ではないだろうか。

みなそこを うづめつくせる  落葉かな 幹治