2010年3月春の雪

このところ曇りや雨の寒い日が一週間ほど続いている。2月18日朝6時、起きて庭をみると、立木や地面が雪で真っ白になり、しきりに粉雪がふっている。今年に入って雪が5・6回もふった。このうち1回は家の前の道路を除雪するほどの量だった。その時は家の北側が1週間ほど根雪になった。今日の天気予報では昼まで雪が降りそうな気配だ。

このままゆくと雪は積もるかもしれない。7時少し前電話が鳴り、「雪で車が渋滞して集まりが悪くなりそうなので、今日の会は中止にしたらどうだろうか」と問い合わせが入る。会員の中にはご高齢の方もおられるので、急遽本日の会を中止に決定する。会の全員に次々電話を入れ、会の中止を伝える。

さて、今日はこれからどうするか。この貴重な雪景色を見逃す手はない。デジカメ撮影の指導者に撮影の問い合わせをする。快諾。8時半駅前で落ち合う。雪は大分小降りになってきた。気温が高いせいなのか道路の雪は融け、ほとんど積もっていない。指導者の車は軽の4駆だ。車の馬力があるので少々の雪道でも問題はない。今日の撮影にはむしろ雪が多いほうがよい。

まずは裏高尾に向かう。市街地を抜け国際マス釣り場から小下沢に入る。途中一眼レフを持った数人と行き合う。この時間に、この辺を徘徊しているのはカメラマンしかいない。東京で雪が降ることは珍しい。カメラを持って少しはましな写真を撮ろうと思っている人は八王子にも大勢いるので、わたくし達を含め、思いは同じだ。雪と電車、雪と梅など材料は沢山ある。雪景色のデータは次の通りとする。

使用カメラ キャノン製コンパクトカメラG10
・絞り優先(Av)      F5.6
・ホワイトバランス     AWB(オート)
・測光方式         評価測光
・露出補正ダイヤル     +1/3~+1(雪の撮影は+にかぎる)
・ISO感度         100

次の撮影地陣場街道奥の“夕焼け小焼けのふれあい里”に向かう。 雪は止んだ。雪の量が多いのを祈りながら車を走らす。現地に到着。期待したほど雪は多くない。園内に入る。ここの撮影対象は、雪と水車、雪と荷車、雪と建物、雪と田などだ。雪は完全に止み、立木からは雪が融けてぽたぽた落ちてくる。今日の撮影はこれまでだ。

園内には前田真三・晃父子の写真常設展がある。ここの写真に無駄なものは一つもない。常道通りの確かな構図。主題が明確で、訴える力があるものばかりだ。この風景写真はどれもこれも群を抜いている。風景写真のまたとない教材がここにある。

それにしても来館者がほとんどいない。今日は平日の雪だったせいかもしれない。有名な童謡“夕焼け小焼け”は、恩方出身の中村雨紅が幼かったときの思い出の風景を詠みこんだものだ。昔はここから八王子駅まで十数キロの道を歩いていったものという。
11時ごろ、撮影を切り上げ帰路につく。途中の街道筋の雪景色は次第にやせて、高尾に着くころには市街地にほとんど雪が消えていた。

だんだんに 土あらはるる 春の雪 幹治


よい写真を撮るにはどうすればよいか。漫然と撮っても印象深いものにはならない。撮るからには発見がある筈で、発見したものをいかに表現するかが勝負になる。写真を撮ることは絵を書くこと似ている。この点は俳句も同じで、初心の頃はなんでも入れようとする。沢山詰め込むほど主題がボケて散漫なものになってしまう。

それから脱するには、主題をなるべく1点に絞り、ほかは省略あるいは余白をもたせことだ。無駄なものを一つ一つ消してゆく。云うは易く、行うは難し。あとは場数を踏むしかない。よいものを沢山みて感性を磨くことが必要だ。これはあらゆる芸術に共通する。