2009年4月太陽光発電・風力発電

なだらかな丘の上から、平地にむけて小川のせせらぎが横たわっている。ここは広いグランドの片隅、この施設の東端にきている。まわりは林に囲まれ、人影もない。

春を探しに、今朝は男女5人がカメラを持参して集まった。わたくし達は、一旦建物に入って通り抜け、元校舎脇のグランドを通って施設の外れにきている。ここは高尾の森「わくわくビレッジ」。高尾駅北口から行きのバスに約10分乗って、800軒もあるグリーンタウン団地端の終点にある広大な多目的リクレーション施設である。北方面に陣馬街道が走り、付近に観栖寺、宝生寺、諏訪神社などの古刹がある。高尾山北面の山麓から東に張り出した恩方の丘陵地に位置している。

この施設は八王子高陵高等学校の施設を再利用し、その周辺の自然を通じたコミュニケーションを図る目的で翌2005年4月に開設された。元高校は開校期間が15年間という短いものだった。施設は最近の建築様式を取り入れ、ゆったりとしてホテルにいるかのような錯覚をおぼえる。本館入口に入ると広間があり、グランド・食堂・教室に通じている。敷地や建物は、元高校の施設がそのまま利用されており、まだどこかに生徒が飛び出してくるような雰囲気を残している。

今日は春分(3月21日)の1週間前の3月16日。鳥は北へ帰り、虫がはいだしてくる仲春の真ん中。午前10時、快晴である。この時節は、日本列島が冬と夏の気団がせめぎ合い、急に暖かくなったり寒くなったりする。日向は暖かいが日陰に入ると寒いのでまだコートは外せない。

さて、このせせらぎの水源はどこなのか。目の前に4基の風車と6枚の太陽電池のパネルが置かれてある。この小川は、流れ落ちて溜まった池の水を風車と太陽電池が発電する電気でモーターを回して汲み上げ、水源に戻し循環する人工小川システムのようだ。

薺(なずな)さく 太陽電池の 架のわきに 幹治


このシステムの性能はどうか。これを管理する「高尾の森わくわくビレッジ」に問合せてみたところ、次の回答があった。
風車  4基
 風速 15m    800W/h
 風速 12.5m   450W/h
太陽電池6基    136W/h
ポンプ       200W/h(昼夜を通して年中運転)

この人工小川は、下流の池から水を汲み上げて上流に送りこむため、ポンプを常時稼動させている。今のところ年間を通した発電量はやや少ない。そのために電力が足りない時には商用電源に切り替え、水が足りなくなると、雨水を加えることがあるという。
充電電池の容量がどれだけあるかの回答が得られなかったが、これでおよそのシステムの概要が分る。

200W/hのポンプは年中稼動し、人工小川は年中流れ、いずれも一定動作をしている。一方、自然の風は吹いたり止んだりしている。太陽光は昼間射し、夜間は射さない。季節により太陽の高さが変わる。日中は晴れたり曇ったりする。雨や雪が降ることもある。
これらの自然の変動する条件をすべて取り入れて、人工小川のシステム設計がなされた。下記の写真と図はこの設備を撮影したものをもとにしている。

太陽光発電、風力発電設備
この発電所で作られた電気はビオトープのせせらぎの循環ポンプを動かしたり、外灯の明かりをつけたりするために使われています。このせせらぎの水は、水道水ではなく雨水を高尾の森わくわくビレッジの屋根からパイプでここまで持ってきています。
一度池へ流れ込んだ水を、せせらぎの上流へ循環させるために発電した電気を利用しています。このシステムは風がない時でもバッテリーに蓄えられた電気を使ってプロペラを回し、ごくわずかな風もとらえて、風力発電機の起動を助けています。風の力を利用する試みは近年急速に増えています。自然から作られたエコエネルギーは二酸化炭素を出すことがない、地球にやさしいエネルギーです。
発電設備の説明図を転記


もし太陽がなかったら、地球には生き物が存在しなかったろう。太陽と地球の空気によって風や雨が生まれ、太陽エネルギーは絶えず水を高い位置に引き上げてくれる。自然は過去から現在に至るまで、悠久に規則正しく繰り返してきた。この小川一つが存在するためには高額な人工設備が必要だが、自然はこれをやすやすと行っている。

太陽光のエネルギーが地上を暖め、夜は昼に地上に到達したエネルギーを放射冷却現象によりは宇宙に放射される。更に地球には薄い大気の層があり、それによって地上に向けてエネルギーが再輻射される。この地球の熱をめぐる仕組みを鮮やかに解明したのが「地球熱機関」として大気と水の循環としてとらえた物理学者の槌田敦氏である。これを近藤邦明氏が分りやすく図解しているので下記に転載した。
地球温暖化について、先駆的な問題提起が槌田敦氏からなされている。

 参考文献 槌田敦著『熱学外論』(朝倉書店,1992年)
~環境問題を見る視点~近 藤 邦 明『環境問題』を考える

http://env01.cool.ne.jp/index02.htm