2009年12月高尾山の紅葉

11月16日(月)午前9時高尾山口に着く。家からふた駅なので何時でも行けるはずなのに、このところ滅多に行くことはない。このところ雨で月1回の撮影会が2度流れた。今日はなんとか一日持ちそうだ。今年の八王子の紅葉便りを聞くと何処も良くないという。夏の天候不順が影響しているせいだろうか。ケーブルで山上駅に着く。今日は紅葉の高尾山を撮ろうということで総勢男女20名が集まった。久しぶりに参加した仲間もいる。2月ぶりの撮影を楽しみにしている様子だ。

まず、参道を歩きリフトからの道に合流する地点に向かう。7~8m位のイロハモミジ(タカオモミジ)が朝日に浮かび紅葉の真っ盛りだ。さあ、これをどう撮るか。傍に案内小屋がある。その陰から紅葉をみるとやや逆光ぎみの側面光の位置になる。なるほど、紅葉の濃紅色が鮮やかだ。みんな夢中でシャッターを切る。ひとしきり撮影が終わってから、今度は順光で紅葉をみる。さっきの濃紅が、なんとくすんだ暗紅色だ。

浄心門を抜けると、右手山側に杉苗奉納者名を墨書した板がずらりと並ぶ。壮観だ。左手は切り立った谷側となり、200年以上の経った杉の巨木が林立している。道はゆるやかなS字カーブをしている。平日なのに家族連れの参詣者が次々にやってくる。道の山側に立ってカメラで覗いてみると、参詣者がS字に並び各々の全身が良く見える。これが真っ直ぐの道であれば人影は重なってしまう。S字カーブの妙だ。こうゆうところがポイントだとデジカメ撮影の指導者から教わる。

写真は構図が命だ。スナップ写真は人物の表情をアップで撮ることが多い。一方風景に人物を入れた写真の場合は人物を大きくすると飽きやすい平凡な写真になり易い。風景の添え物として点景に人物を配した方が良いと教わる。このバランスが難しい。なにせ人は動いている。シャッターは押してから少し時間がかかり直ぐには切れない。若干タイムラグがある。そのわずかなずれがシャッターチャンスを逃してしまうことが多い。近づいて来る距離を予測して、早めにシャッターを押すのがよいのかもしれない。

指導者は惜しげもなく大切なポイントを教えてくれる。撮ってみせ、直ぐにデスプレイで見せてくれる。みんなは同じように撮ってみるが、なかなか思うように撮れない。実物を見て手に手を取って教えてくれるので、どんな人でも繰り返しやっているうちに同じ写真が撮れるようになる。こんなやり方で教えてくれるひとは他にはいないだろう。習い事は型から入れとよく云われる。型を繰り返し練習しているうちにその道の要諦が分かってくる。自分らしさや個性などというもの型を覚えた上で積み上げればよい。まずは指導者が云う通りをやってみることだ。

写真は単に撮れば良いというものではない。撮るだけなら今はデジカメで誰でもできる。人に見せて記憶に残る写真を撮るにはどうすればよいのか。そこが問題だ。最近は最近あちこちの公民館でもよく写真展が開かれる。八王子には郷土が生んだ風景写真家の前田真三がいる。生家は下恩方の陣場街道沿いにある旧家だ。土地の名望家なのだろう。立派なたたずまいの豪農である。

わたくしの所属している八王子千人塾に前田真三を古くから知る人がいて、その人から真三の話を聞いたことがある。若い頃の真三は手に負えない暴れん坊だったそうだ。功なり遂げた人を称して、偉人だとか天才だとかいうことがあるが若いころの逸話によれば、たいがいどうしようもない外れものが多い。一番有名な人は誰も良く知る織田信長だ。若い頃の信長は傍若無人、自ら思うがままに行動した野人だったようだ。それらの人が一度何かに接して目覚めると180度人が変わってしまい新たな目的に向かって猛進する。その苦難な過程が人は知らないため、到達して姿をみて、あれは天才だとかいう。天才とは自然の摂理を我が物として一体となすことができた人ではないだろうか。

大正11年、東京都八王子市下恩方町生まれ。
昭和15年都立八王子工業高校、昭和17年拓殖大学(専)卒業。
館山海軍砲術学校を経て、戦地へ。昭和21年復員。
昭和23年総合商社ニチメン入社、以後17年間勤務。
昭和42年株式会社丹渓を設立し、写真活動に入る。
昭和46年日本列島縦断撮影旅行を約3ヶ月かけて敢行。
その帰路、美瑛・上富良野の丘と出合う。
昭和49年はじめての写真集『ふるさとの四季』刊行。
以後風景写真の分野に新しい作風を確立。
日本写真協会賞年度賞、毎日出版文化賞特別賞などを受賞。
昭和62年北海道美瑛町に自らの写真ギャラリー拓真館を開設。
平成10年逝去(76歳)。
http://www.hachioji-kankokyokai.or.jp/yuyake/gallery/gallery.html

さて、話はそれたので元にもどる。
午後に入ると、日差しが変わる。写真を撮る人は早朝が勝負だという。昼の日差しには陰影が出ない。朝夕であれば光線が斜めに射すので陰影が生まれる。そこに深みのある写真が撮れるのだろう。午後からも幾つかのポイントを教わり、午後3時頃に収穫の多い撮影会を終わることができた。

落ち葉して 日のさしこめる 雑木林 幹治