2008.3寒竹

このところ寒い日が続いている。北からの寒気団南下と、西から次々押し寄せる低気圧とで日本海側が大雪にみまわれている。1月中旬から2月中旬まで約1ヶ月間、八王子は日中最高気温10℃を下回る日が続き、降雪が1月23日、2月3日、6日、9日、13日の5回もあった。この冬は近年になく雪が降る。2月3日、終日雪が降りつづき家の前の道路に約8cm位積もり、夕方近所が総出で除雪した。例年、関東に雪が降るのは立春(2月4日)を過ぎてからが多い。その点では、まずます例年並というところか。

2月5日、中山の畑にゆく。前々降った雪が畑を一面に埋め尽くしている。マルチシートを使ったトンネル栽培の畝を重点に、積雪の具合を見てまわる。ところどころマルチシートのトンネルが雪の重みでつぶれ、シートの天井を支える心線が横倒しになっている。マルチシートにのっている雪は粗目状に固まっている。知人と二人で、その一つ一つ持ち上げ取り除く。シートの上から、横倒しの心線を手繰って元通りに立て直す。下・中・上段各畑の全てマルチシートを点検し、立て直す。このようなマルチシートの除雪は、菜園のような小規模であればたいしたことはないが、数反(1反=300坪:約1000㎡)もある専業農家では大変な作業量になると思われる。

マルチシートを支える心線は直径4~6mm位ある塩化ビニル被覆の鉄線だ。この心線の代用になる竹を探しに、午後、約200m離れた畑の地主の竹山に行く。ここは南に面し日当たりは良い。冬日は斜めに射すためか、斜面は雪が融け、すでに乾いている。平地の前畑はまだ雪が被っている。地主は竹林の一部を開らき整地し、墓地をつくるのきのだという。先日頼まれた知人がこの竹を伐り、それが一隅に横倒しに積まれてあった。
これを持ち帰って、マルチシートの心線の代用になるようにその竹を加工する。

手にとってみると根元の方で直径が約10㎝弱あり、長さが約10m以上もある真竹だ。積まれてある竹の中から頃合いのものを選び出し、鋸で節から出ている小枝を切り外して直径7~10cm×長さ約2mの寸法に切り揃える。これを10本束ね二人で前と後ろを持って運ぶ。約20kgはあるだろうか、結構重い。途中下ろし休みながら下段畑まで運ぶ。

少年のころ田舎で、洪水対策に土手に置く竹の蛇籠作りを見たことがある。十文字槍状治具を竹の断面に木槌で打ち込み割っていた。まず、鉈を用意した竹を6つに割ることから始め、これを最終的に幅約2~3cmに仕上げる。竹の断面に鉈を当て、金槌で叩けば真っ直ぐに割れる筈であるが、厚みがある刃が途中で正目に食い込み曲がってしまうことがよくある。均等の幅に手直しするため、刃物でなんども削る。

今は人々が利便性を追求し、それに答えるメーカが道具や資材を大量に消費者に売る。ものを使うと最後に大量の不燃物のゴミになり、これが最終的には地球環境を汚す公害の元になる。昔の農家は、身近にある竹や藁でくらしの必需品を手作りし、使い終わると地に戻し、堆肥にし物質循環したので不要なものはほとんど出なかった。

寒竹の 寒のしまひを 伐りにけり 幹治