2008年1月木の葉                   

11月17日・18日は今年の銀杏まつり、例年より少し早いが街道の銀杏はまだ黄葉になったばかりの頃だった。昨年は雨にたたられて歩道が銀杏落葉で黄色く染まっていた。銀杏の黄葉は道に面した日の当たる側の方が、家並みで日影になる側よりも進んでいる。

わたくしの家の近くに万葉けやき通りと御陵参道がある。ここには欅並木があり、まつりが終わって一週間後から落葉しはじめた。その頃から落葉を掻く人が目立つようになった。掻いた落葉は45リットル入りの大袋に入れられる。橙色が市提供のボランティア袋、半透明が個人の購入した袋だ。町内会が総出で町内の歩道を掃除したり、道に面した家が歩道を掃いたりしている。落葉を集めた袋は道路の脇に置かれてある。

中山の畑は上段・中段・下段の3箇所に分れ、それぞれに堆肥場がある。今年も堆肥づくりがはじまった。ここには30名近い会員がいて、有志が落葉を集めてくる。それぞれ個人が落葉掻きしたものや道路脇に置かれた落葉袋をまとめて持ってくる。
わたくしは、昨年と同様に家の近くの狭間公園で欅の落葉掻きをした。昨年ははじめてで何時ごろ落葉するのか分からなかったため、11月初旬から何度も下見をした。その頃はまだ早すぎ、中旬になってようやく落葉掻きを行った。今年は昨年よりも落葉が大分遅れたので、11月26日と12月2日の2回行った。

公園広場の大欅の下で落葉掻きをしていると、犬の散歩をしている人、夫婦連れ、グループで歩いている人、近所のご老人などが通りかかり、時たま声をかけてくる。「お掃除ご苦労さま」、「なににするの」、「菊づくりでもやっているの」などさまざまである。わたくしが「畑の堆肥にする」というと驚いたような顔をする人もいた。今ごろは畑でどのようにして野菜をつくられているか、ほとんどの人は知らないだろう。それでも中には戦後田舎で農業の手伝いをした人などがいて、けっこう話がはずむ。

さっきから、杖をついた老婦人がゆっくりと広場を行き戻りしている。「たいへんですね。」と声をかけてくる。白髪の色白の上品な人だ。この老婦人以前にも見かけたことがある。いろいろ話をしていると、最近ここに越してきたという。公園のそばのマンションの長男夫婦のところへでも身を寄せているのだろか。午前の散歩を日課にしているようだ。老婦人「以前は三鷹に住んでいて、近くに大きな欅の木があり落葉を掃くのがたいへんだった。ここに来ると昔を思い出す。ここは静かで眺めもよいところね。」、わたくし「今頃、高尾山は紅葉で沢山の人がでて騒がしいでしょうね。ここは人通りも少なく、高尾山に近く眺めの良いところです。」と答える。言葉がしばらく途絶え、またゆっくりと話しかけてくる。わたくしは落葉を掻くためにその場所を少し離れた。今日は快晴、無風である。突然、落葉掻きが済んだそばの大欅の枝から無数の木の葉が音もなく一斉に散り始めた。木の葉は、朝日に当たってきらめいて落ちてくる。その老婦人は杖をやすめ、ばらくの間、面をあげて降りかかる木の葉を浴びている。

面(おも)あげて あげて木の葉を 浴びにけり 幹治