2007年3月 春耕

この冬、東京に雪が降らなかった。2月中旬というのに日中の最高気温が10度を上回るような暖かい日がつづいている。今年の冬の暖かさは異常だ。

地球温暖化が世界にもたらす影響を予測した国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第1作業部会が2月2日に最新報告書を正式発表した。温室効果ガスを削減する京都議定書の約束期間が来年に迫るなか、今回の報告は一刻も早い対策実行を各国政府に求める内容となった。環境省はこれに合わせ、国内の温暖化に関する調査結果をまとめて公表した。それによると、日本では今世紀末に最高気温が30度以上の真夏日が、2~3倍に増え、夏季の豪雨の頻度が高くなる。海面も上昇し、東京、伊勢、大阪の三大湾で高潮の危険性が増すという。
2007年2月3日読売新聞

農道をはさんで上段の畑から下段の畑へカケスが飛んだ。上の畑の真ん中を雄のキジが歩く。全体に小鳥のさえずりが少ない。もう、南に向けて渡りをはじめているのだろうか。畑の大根や白菜は薹がたち放置されている。隣の農家は、こんな暖冬は経験したことがない、野菜の成長が早すぎるのでこれまでの農業経験が役に立たないとぼやく。畑では、もう春の種まきに備え、土づくりや畝の準備などを始める人が目立つ。

豆類には蚕豆(ソラマメ)、枝豆、隠元(インゲン)豆、豌豆(エンドウ)などがある。このうちエンドウは秋に種を播いて春に収穫する。エンドウの種類に、薄紫の花を咲かせる絹さやや白い花を咲かせるスナックなどがある。

昨年11月、知人は2種類のエンドウの種を畝に播いた。例年は、初冬までに少し芽を伸ばし、そのままの丈で初春を迎える。霜が当たらないような陽気になるとぐんぐん蔓を伸ばしはじめる。それが今年、立春に入ってもう約10cm位に丈が伸びている。知人は畑を始めて15年になるが、こんなに早くエンドウが伸びだした年はなかった、このまま伸びて遅霜にでも合うとひとたまりもない、と心配している。

近年野菜の露地栽培に、霜対策や防鳥・防虫・除草としてパオパオが使われている。パオパオは商品名で、使い方は種をまいた野菜の畝に直に敷くものと、畝全体をトンネル状に覆う方法があり、単独で使うか両方を組み合わせて使うかする。わたくしは知人を手伝って、この両方を使い1月末に人参の種を畝に播いた。これから強霜が来ないという予測とパオパオの効果を期待してのことである。(通常人参の種播きは霜が降りなくなってからの3月ころが良いとされている)東京地方は冬から春にかけて晴天が続き、よく乾燥する。畑では野菜を天水で育てるが、種を播いた直後には十分水をやる必要がある。今回の人参の種まきで、直敷きのパオパオが濡れるまで十分に散水した。

最初に均した畝に鋤簾(じょれん)で溝をつける。種をどの位の間隔で播くか、どの位土を被せるかは野菜の種類によって違うという。ある程度成長すれば間引きが必要だ。種を播く時には、成長した姿がどんな風になるかを予想しておかなければならない。

耕すや 鍬になりきる ところまで 幹治