2006年4月 春一番

3月6日朝、起きてテレビの天気予報を見ると、八王子は午前中が雨で午後から曇り夕方には雨がふると報じている。外に出てみるとまだ寒い。襟巻きとコートの冬支度で9時前に家を出て電車に乗り、京王八王子からバスに乗り滝山城址向かう。バスは純心女子大学前から左折して滝山街道に入る。この街道は、八王子市の隣市のあきる野市・福生市を結ぶ幹線で、今日も車が多く渋滞している。この街道は郊外にあるが、2車線の車道・歩道共道幅が狭く、車の通行量がいつもあきれる位多い。走行している車の約半数は大型の産業用トラックだ。せまい歩道を歩くと、後ろから接近して来る車が脇を抜けヒヤリとすることがある。お年寄りや子供が歩道を歩いたり、道を横切る場合は特に危険だ。交通事故も起きているのではないだろうか。

人々は暮らしが豊かになって便利さを追い求め、遠くのものをいち早く取り寄せようとする。そうすると生活用の物資や業務用資材のトラック輸送がますます増える。運送量が多くなるとGDP(国内総生産)が上がり、経済が成長したかのように見える。近年、短サイクルの大量生産・大量消費・大量廃棄が進んで炭酸ガスや産業廃棄物の大量排出され、それらが原因で各地で様々な公害が発生し自然環境が破壊されている。

9時40分頃に滝山城址下に着く。近くの交差点の赤信号を横目にみながら、左右の車を確かめて道を横切る。今日は先着のメンバーが5・6人来ている。少し雲がでているが日差しはあたたかい。「今日の天気予報は外れたね。」とあいさつ代わりに言い合う。10時を少し過ぎるまでバスで来る人を待つ。その間に3台位のバスが通過していった。そこから両側に竹林が迫る急な山道を登り本丸の道に出る。道の両側は雑木林だ。西側は急な斜面になっていて人手が加わっていない。東側は平坦になって下刈りされている。雑木林はまだ冬枯れのままで見通しが良い。山道から一歩雑木林の中に入ると、複雑な曲輪や空堀の跡が現れ、大規模な中世平山城の往時の遺構が残っている。

三の丸址の間道をおり蔵王権現社の下に出る。そこに小川が流れてセリが生え、土手にヤブカンゾウやニワトコが芽を出していた。一口摘んでおり口に入れる。癖がなくて甘い。サッと茹でて食べるときっとおいしいに違いない。そこから城址の方へ道が続いている。途中に山家があり鶏を飼っていた。このあたりは谷戸になっており、どこかの山村の奥にきたような風趣がある。昼頃になると日が翳り、少し寒くなってきた。

翌朝のテレビは、昨日本州から日本海を通過中の温帯低気圧に向かって南風が吹き込み、関東地方に春一番が吹いたことを報じていた。

春一番 四手の雄花を ひとゆすり 幹治