2006年1月 作況指数

高月町の幅広い農道をゆく。前方に秋川の堤防が見える。稲刈したあとの株からのびだした葉は折からの寒風にさらされて黄色くほうけている。「ひつじ」である。禾(のぎ)偏に魯(ろ)と書くが、わたくしのパソコンではこれがでてこない。禾は稲・麦などイネ科植物の実の外殻にある針のような毛を「のげ」ともよび、魯を辞書で調べると「おろか」とある。この「ひつじ」は稲のような形をしていても稲穂にならないので「おろか」という意味か。

先々月テレビを見ていたら、昨年の新潟県中越地震の震災地のその後の様子を映していた。震災で田んぼに稲穂がたれている映像である。昨年10月23日にマグニチュード(M )6.8の地震が新潟地方を襲い、多くの棚田が壊滅的な被害を受けた。あれから1年を経過し、田植えができなくて諦めていた田んぼの「ひつじ」が成長して稲になり、その稲穂を刈り取っている様子だった。長岡周辺は日本海の冬の季節風を受け、世界有数の豪雪地帯である。厳冬期をしのいで稲が生き延びた。自然が持つ稲の生命力に驚く。決しておろかな「ひつじ」ではない。震災地はこれから二度目の冬を迎える。この「ひつじ」に見習って元の姿に復興してもらいたいものだ。

今年の夏はアメリカ南部でハリケーンが発生し、ニューオリンズ周辺で大被害を受けた。ハリケーン襲来に、人々は車に乗って続々と北に向けて避難している様子をテレビが放映していた。日本では台風がくると水害や山崩れを避けるため近くの安全な場所に避難する。この被災地では何百キロ離れた場所にまで避難するのである。日本では有史以来、土地に留まって地震や風水害と戦ってきた。騎馬民族の歴史は、自然災害に合うと土地を捨て新しい土地に移り住んでいった。ここに、土地にしがみついて自然と闘う農耕民族の末裔と、土地に執着のない騎馬民族の子孫との違いがでているのだろうか。

昨年は、本土に上陸した台風は10個で過去55年間で最多であった。平年は2個から5個、今年は3個でまず平年並みか。昨年は如何に異常な年だっかが分かる。作況指数他を昨年と比較してみる。

2004年

2005年

地域

作況指数

収穫量 kg /10a

地域

作況指数

収穫量 kg /10a

平均

全国

98

514

全国

101

532

上位

関東・東山

106

560

北海道

109

573

下位

九州

85

424

沖縄

92

283



作況指数は各地域の平年作との比較いう。

現在、わが国の食料自給率は約40%といわれ、食糧率(穀物にかぎる)では約27%。米の消費量は、1962年がピークで国民一人当たり約120kg食べていたものが、現在は約60kgで半減している。米はほぼ自給しているが、のこりの約60%の食料は外国からの輸入に依存しており、食の安全保障上極めて異常な事態といわなければならない。

けいはんの ひくくなりたる 冬田かな 幹治