2004年12月 冬田

帰ろう 大好きな山古志村に 帰ろう 時間がどんなにかかっても 帰ろう 皆んなで力を合わせて 帰ろう がんばれ!!
東京で花は咲いたけど種も根っ子も山古志の村 田中トシオ 

この作者は、今度の新潟県中越地震の震源地に近い山古志村出身者で世界理美容選手権大会での優勝者でもある。「帰ろう」の檄文は村長に手渡され、村の8箇所に貼られているという。

ここは棚田で有名なところで、日本の棚田百選にも選ばれているところだ。残念ながら私は未だ行っていない。行った人の話によると、冬場の雪景色、春の雪解け、夏の新緑、秋の紅葉と桃源郷のようなところらしい。今回の震災で山が動いて地すべりを起し、多くの棚田は崩壊。川は土石流で堰き止められ、多くの道路が寸断し家屋が倒壊。村は壊滅状態になり、全村民が村から一時的な避難を余儀なくされた。

この地の住みついた村人は、何代にも亘って人力で山の斜面を切り開き道をつくり、石垣を積み溜め池をつくり水を引いて棚田をつくった。名もない農民が共同作業で親から子へと営々と築いてきた一大土木工事である。

このような棚田は日本全国各地にある。棚田は、どの田んぼも一枚当たりの面積が狭く農業機械が入りづらい。田植えや稲刈りは昔ながらの人手によるところが多い。また、棚田は放っておくと大雨や積雪で石垣が崩れるので春先に石積みの補修を行う。その他、水路の点検は絶えず行わなければならない。平地の米づくりの何倍も手間がかかる。

確かに日本の米は農家が小規模経営のため原価が高くなり国際競争力がないかもしれない。棚田だけでは耕地面積が狭いため米づくりだけでは農業経営が成り立たない。しかし、山地や平地に一時的に大雨が降ると森林と田んぼがダムとなって一時的に水を溜め、時間をかけて水を流し洪水になることを防いでくれる。一説によると水田は日本のダムの約3倍位の貯水能力があるという。

都市や平地以外の中間農業地域と山間農業地域を中山間地域といい、日本の国土面積の約70%、耕地面積の約40%、農家人口の約40%、粗生産額の約37%を占める。中山間地域の景観などを含めた公益機能を経済的に評価すると約3兆円にもなるともいわれている。下流の村や町の人々は、上流の村人が森林や棚田を守っているお陰で生活ができていることを忘れてはならない。

特に棚田は、大昔から現在も洪水防止機能と米づくりを兼ねそなえた現代版「自然環境を守る万里の長城」であるといえる。